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「ジェノサイド」 高野和明 [書庫]

2012年版「このミステリーがすごい」第1位になった本書。
2011年版の1位が大変面白かったので、今回も期待して図書館にて借りてきました。

作者は初めての人なので作風も全く分からず手に取りました。
「ジェノサイド」とは大量殺戮のこと。
人類絶滅の危機という謳い文句から最初は映画のアウトブレイクのような細菌兵器による危機とその回避のための戦いかと想像してました。

序盤は私の最も苦手とする理科学系の説明と専門用語の大量羅列。
「ヒトゲノム」がどうの「DNA]「塩基配列」などのなじみの少ない科学用語が延々と説明されている部分で挫折しそうになった。
それでも何とか読み進めたのは舞台が、コンゴのジャングル、アメリカのホワイトハウス、日本の一大学院生と言うどこでこれが結びつくんだという疑問を説きたい一心だった。

結論から言えばかなり興味深かった。
これ映像化してもかなりの作品になるだろうなと言う感じ。
ヒトの進化とそしてその先にある人類絶滅もあり得る綱渡りのようなジェノサイド。
そうならないために必要なものはやはり想像力と道徳心しかないのだろうと思う。

この作品の中で所々で残虐な内戦の様子が出てくる。
その中で一番悲惨なのは村が襲われ男は皆殺し、女は数人の若い娘だけを残して暴力で汚された上で殺される。
幼い子供はまるで虫けらのように殺される。
若い娘たちは性奴隷として連れて行かれ、少年たちは兵士として使うために連れて行かれる。

私たちの知らないところでほんとうにこういうことが起こっているかもしれないという恐怖。
ほんとうに怖いのは霊でも怪奇現象でもなく、人間なんだということが改めてわかる。

人間と言う種の持つ残虐性とその真逆にある慈悲とか慈愛とはどこからくるものなのだろう。


ただ、この作品しか作者の作品を読んだことがないので、全く見当違いかもしれないが、この作品を読み終わった後なんだか釈然としないというか、すっきりしない感情が残ったのだ。
それがなんなのかと考えたとき、一番先に浮かんだのが、本来主人公であるはずの日本人大学院生にかかわる韓国人留学生の描き方だ。

まずここでなぜ唐突に韓国人留学生を登場させねばならなかったのか。
この一件に韓国と言う国も韓国人の考え方や歴史が関わっているかと言うとそんなことは一切ないし、あまりにも非の打ちどころのない人物設定にこちらが主人公なの?と思わせるところがある。
そしてところどころに出てくる日本が戦時中行ったといわれる南京大虐殺(証明されてはいない)とか関東大震災の後の朝鮮人虐殺とか。
その一方で韓国人留学生がホームで日本人を救って死んだことを上げ韓国賛美、日本下げ発言が随所にみられる。

私はここではむしろ日本人だけ、もしくはホワイトハウスでのいきさつをもっとリアルにするためにはアメリカ人、もしくはヨーロッパ人の留学生にこのキャスティングはしてほしかった。
途中まで私は本気でこの留学生こそがホワイトハウスのまわし者であるコードネーム「サイエンティスト」だと思っていた。
ところが最後まで彼はただただ優秀で主人公のために危険を冒してまで協力する100%善意の人だというところにはぐらかされたようななんだか座りの悪いものを感じてしまったのだ。

そして随所に現れる日本人への侮蔑ともとれる表現。
中でも傭兵の一人であったミックこと「ミツヒコ・カシワバラ」の描写などひどいものだ。
ただ乱暴で子供の兵士まで狂ったように殺し、仲間から至近距離で撃たれジャングルに遺体のまま放置された彼。
同じ傭兵の一人(傭兵は4人だけ)は絶命した後も危険を冒し仲間でジャングルに穴を掘り埋葬し、のちに掘り起こすつもりなのだろう地図に場所を示すことまでしている。

ミックがなぜそういう行動に出たのかはちょっとかすかに思わせぶりな伏線を前半でしておきながら後半では全く触れず人間性を全く示すことなくただ狂人のように扱われて仲間によって葬り去られた。
そのような人物がなぜ日本人でなければならなかったのか。

最後は確かにまあハッピーエンドと言えないことはない。
守るべき命は守られたし、助けたいと願った命は助けられたし、主人公とその手助けをした留学生には未来が開けたし…。
でも、この気持ち悪さは何なのだろう。

作者の持つ歴史観の一端が垣間見えてそれが私とは相いれないことからくるものなのだろうか。
できることならそういう歴史観は抜きにしてエンターテイメントに徹してくれたらよかったのになあ。
貴志祐介さんの「新世界より」をもう一度読みたくなってしまった。

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