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「ソロモンの偽証」宮部みゆき3部作 [書庫]

いやあ~! さすが宮部みゆき。
これだけのボリュームを全く中だるみさせずに結論までひっぱる筆力。
圧倒されます。

構想15年。
連載期間9年。

中学校が舞台で中学生の中学生による中学生のための事件と捜査と裁判。
誰もが純粋で甘ったれで小狡くて義憤にかられるかと思えば自分の立場を守るためには嘘もつく。

連載時の時代背景からか今のように携帯やSNSが普及してない。
だから公衆電話からの通話がキーポイントになる。

今の中高生が読むと違和感あるかもしれない。
同じような中学時代を過ごした人間には無理なくストーリーに入り込めるけど。


クリスマスの朝。
思いがけず夜半に降った雪が大量に降り積もった終業式。
一人の中学生が本来通るべき正門に苦手な教師が雪かきをしているのを見つけ、施錠されている通用門を乗り越える。
バランスを崩し雪の上に倒れこんだ彼は自分の目の前に突然現れた腕をぽかんとみつめる。

・・・なんだこれは・・・・


同級生の遺体が雪の中から掘り出される。
彼は自殺か事故か、それとも…・・。

自殺と決着したはずのその死が一枚の告発状とともに殺人事件として独り歩きを始める。
あくまでも学校の中の噂とマスコミによる学校追及のスキャンダルとして。

ミステリーではないです。
第2部で何となく真相は分かってくる。
3部ではその確認作業のような感じなのだが、ラストはやはり読み応えありました。

ただ、自殺か事故か殺人かという決着なら簡単につきます。
でも、なぜそこに至ったのかという意味での犯人(あえてこういうなら)の背景は何と表現したらいいのだろう。

哀しいでもなく、切ないでもなく、ましてや清々しくもなくでも絶望よりは希望が漂うラスト。
遺体で見つかった少年は果たして被害者?加害者?

大人でも、子供でもない思春期真っただ中の少年少女たち。
その一人一人が抱えている様々な(大きさや深さも)問題や悩みもすごく身近だ。

悪魔にも天使にもなりえる子供たち。
そして、そんな子供たちを見守る大人たち。
親、警察関係、学校関係、マスコミ関係。

人間関係はたくさん出てくる割にはとっても整理されていてごちゃごちゃしていないので読むのが辛くなかったです。

「これは殺人事件です。 柏木卓也君による柏木卓也君に対する殺人です」

この一言に集約されるまでにどれだけの葛藤が、闘いがそれぞれにあったか。
ミステリーとしてではなく、群像劇として秀逸です。
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「ジェノサイド」 高野和明 [書庫]

2012年版「このミステリーがすごい」第1位になった本書。
2011年版の1位が大変面白かったので、今回も期待して図書館にて借りてきました。

作者は初めての人なので作風も全く分からず手に取りました。
「ジェノサイド」とは大量殺戮のこと。
人類絶滅の危機という謳い文句から最初は映画のアウトブレイクのような細菌兵器による危機とその回避のための戦いかと想像してました。

序盤は私の最も苦手とする理科学系の説明と専門用語の大量羅列。
「ヒトゲノム」がどうの「DNA]「塩基配列」などのなじみの少ない科学用語が延々と説明されている部分で挫折しそうになった。
それでも何とか読み進めたのは舞台が、コンゴのジャングル、アメリカのホワイトハウス、日本の一大学院生と言うどこでこれが結びつくんだという疑問を説きたい一心だった。

結論から言えばかなり興味深かった。
これ映像化してもかなりの作品になるだろうなと言う感じ。
ヒトの進化とそしてその先にある人類絶滅もあり得る綱渡りのようなジェノサイド。
そうならないために必要なものはやはり想像力と道徳心しかないのだろうと思う。

この作品の中で所々で残虐な内戦の様子が出てくる。
その中で一番悲惨なのは村が襲われ男は皆殺し、女は数人の若い娘だけを残して暴力で汚された上で殺される。
幼い子供はまるで虫けらのように殺される。
若い娘たちは性奴隷として連れて行かれ、少年たちは兵士として使うために連れて行かれる。

私たちの知らないところでほんとうにこういうことが起こっているかもしれないという恐怖。
ほんとうに怖いのは霊でも怪奇現象でもなく、人間なんだということが改めてわかる。

人間と言う種の持つ残虐性とその真逆にある慈悲とか慈愛とはどこからくるものなのだろう。


ただ、この作品しか作者の作品を読んだことがないので、全く見当違いかもしれないが、この作品を読み終わった後なんだか釈然としないというか、すっきりしない感情が残ったのだ。
それがなんなのかと考えたとき、一番先に浮かんだのが、本来主人公であるはずの日本人大学院生にかかわる韓国人留学生の描き方だ。

まずここでなぜ唐突に韓国人留学生を登場させねばならなかったのか。
この一件に韓国と言う国も韓国人の考え方や歴史が関わっているかと言うとそんなことは一切ないし、あまりにも非の打ちどころのない人物設定にこちらが主人公なの?と思わせるところがある。
そしてところどころに出てくる日本が戦時中行ったといわれる南京大虐殺(証明されてはいない)とか関東大震災の後の朝鮮人虐殺とか。
その一方で韓国人留学生がホームで日本人を救って死んだことを上げ韓国賛美、日本下げ発言が随所にみられる。

私はここではむしろ日本人だけ、もしくはホワイトハウスでのいきさつをもっとリアルにするためにはアメリカ人、もしくはヨーロッパ人の留学生にこのキャスティングはしてほしかった。
途中まで私は本気でこの留学生こそがホワイトハウスのまわし者であるコードネーム「サイエンティスト」だと思っていた。
ところが最後まで彼はただただ優秀で主人公のために危険を冒してまで協力する100%善意の人だというところにはぐらかされたようななんだか座りの悪いものを感じてしまったのだ。

そして随所に現れる日本人への侮蔑ともとれる表現。
中でも傭兵の一人であったミックこと「ミツヒコ・カシワバラ」の描写などひどいものだ。
ただ乱暴で子供の兵士まで狂ったように殺し、仲間から至近距離で撃たれジャングルに遺体のまま放置された彼。
同じ傭兵の一人(傭兵は4人だけ)は絶命した後も危険を冒し仲間でジャングルに穴を掘り埋葬し、のちに掘り起こすつもりなのだろう地図に場所を示すことまでしている。

ミックがなぜそういう行動に出たのかはちょっとかすかに思わせぶりな伏線を前半でしておきながら後半では全く触れず人間性を全く示すことなくただ狂人のように扱われて仲間によって葬り去られた。
そのような人物がなぜ日本人でなければならなかったのか。

最後は確かにまあハッピーエンドと言えないことはない。
守るべき命は守られたし、助けたいと願った命は助けられたし、主人公とその手助けをした留学生には未来が開けたし…。
でも、この気持ち悪さは何なのだろう。

作者の持つ歴史観の一端が垣間見えてそれが私とは相いれないことからくるものなのだろうか。
できることならそういう歴史観は抜きにしてエンターテイメントに徹してくれたらよかったのになあ。
貴志祐介さんの「新世界より」をもう一度読みたくなってしまった。

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「灰色の虹」  [書庫]


灰色の虹

灰色の虹

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/10
  • メディア: 単行本



初読の作家さんでした。
文体は癖がなく読みやすいです。

テーマは「冤罪」そして「復讐」

容姿にコンプレックスを持ちいつも気弱に足元を見つめるようにうつむいて過ごしてきた主人公江木雅史。
だが、家庭的には明るくバイタリティある母と姉、気弱だが一本気でまじめな父と穏やかに過ごし会社では多少軽んじられながらもまじめに仕事に精を出していた彼。
同僚の似た者同士のような地味だけどまじめな人付き合いの下手な彼女と結婚の約束もでき今から彼の人生も平凡ながら静かな暮らしが待っているはずだった。

彼の上司が殺害された事件でトンデモない刑事に目をつけられてしまった彼は持ち前の気弱さゆえに自白をしてしまう。
やってもいない殺人が一人の刑事の思い込みと目撃証言者の無責任な言動とが不幸な相乗効果をあげて彼は起訴される。

エリート街道をまっしぐらに突き進んできた検事は自白調書のみしか見ず、弁護士は裕福では無い彼の弁護にあまり熱心にはなれず・・
彼は最高裁まで何度もくじけそうになりながら戦うが結局殺人犯として刑を受け7年後に出てくる。

そこから彼の復讐劇が始まる。

この中で彼の復讐に値する人間がいるとしたら、それは最初に出てくる刑事といい加減な目撃証言をした証人だと私は思う。
弁護士はさすがにいい加減で嫌な奴だが、警察で自白し、検察庁でも認めてしまっている以上それをひっくり返すのはドラマでない限りそう簡単ではないし、目撃証人(これがそもそもいい加減なんだけど)のはっきりと「この人に間違いありません」と法廷で証言されてしまったら手の打ちようがない気がする…・。

検事も確かに人間味の少ない嫌な奴だが、検事としては優秀なのだと思う。
感情をできる限り抑えるあたりもエリート検事としては当たり前なのだろうし…。
裁判官にいたっては復讐の範疇にはいることの方が怖いなあと思う。

結局あのいい加減な目撃証言(この証人は結局復讐されず助かっちゃうけど)と自白がすべてと考えて強引な捜査と供述を創作する刑事がいたことがすべての悲劇の始まりなのだけど…。

冤罪というものの怖さと悲劇がストレートに伝わってくる。
ただ復讐という視点で見ればかなり雑だ。
どこまでが彼の犯行でどれが彼が関わっていないのか判別できないところが多々ある。

いろいろな人物が現れては消えてゆくので時々人物の整理をしながらでないと状況がわからなくなるところがある。

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「新世界より」 貴志祐介 [書庫]

ここのところ読書の秋ならぬ読書の冬になっていました。
なぜか突然活字に飢えたようになって、図書館からこれはと思うものを予約しては読んでました。


悪の教典 上

悪の教典 上

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/29
  • メディア: ハードカバー



悪の教典 下

悪の教典 下

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/29
  • メディア: ハードカバー



死ねばいいのに

死ねばいいのに

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/05/15
  • メディア: 単行本



隻眼の少女

隻眼の少女

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/09
  • メディア: 単行本



写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/06
  • メディア: 単行本



ここまで読んで失敗は一冊だけ。
「隻眼の少女」
これはね~  ミステリーファンにとっては裏切り行為でしょう~って作品です。
最後の最後で裏切られました。
もうこの作家さんの作品読むことないですね。

他の作品はどれも甲乙つけがたい出来で、さすがに「2010年版 このミステリーがすごい」で上位にランキングされただけの事はあります。
「隻眼…」もその中にあったんだけどね~…・

貴志祐介さんの「悪の教典」箱の作者の最高傑作って歌われてましたけど、読んだ瞬間は納得しました。
うわ~さすがにすごいのかくなあ~って・・。

でも、この作品見たら最高傑作は間違いなくこっちでしょう。

新世界より 上

新世界より 上

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/01/24
  • メディア: 単行本



新世界より 下

新世界より 下

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/01/24
  • メディア: 単行本


これ読んで二日目ですけど、まだ余韻に浸ってます…。

1000年後の日本なんだけど、決して今以上に科学が進んで何てことなくて、むしろ必要最小限しか科学は使わない。
日本全体で町としての集団はわずかに10ほど。
それも必要最低限しか交流はない。

ではどうやって暮らしているのか、人間たちは今の時代で言うところの超能力(本の中では呪力とよぶ)を全員が持っている。
子どもたちは小学部を過ぎると呪力を開放することを許されて次の段階で開発される。
ここまでの段階で能力に衰えのあるものは知らないうちに消えてゆき周りの人の記憶からも抹消される。
ここまでだって結構嫌な感じの社会だな~って思ってたんだけどこんなの序の口のそのまた序の口だった。

この社会では人が人に対して悪意を持ってはいけない。
相手に悪意を持つだけで自分にダメージが起こるようにDNAを操作されているのだ。
ましてや相手を傷つけたり殺したりしたらその場で自分の心臓が止まる。

だけど、これがのちに人類を破滅させるほどの足かせになってしまうのである。

そしてあらゆる謎が解けた後の最後の最後に一番ぞっとしたのがこの物語に必要不可欠な化けネズミと称される生き物たちの正体。
感情があれば知能があって想像力があればこそ人間なのに、呪力をもったために考えることも、疑うことも、しなくなり奴隷のように扱っている化けネズミから{神様)と呼ばれることに疑問を持たない子供たち。

そして殺戮が始まる。
呪力と言う万能の力を持ちながらなぜ人間はあんなにあっさりとやられてしまったのか。
それもたったひとりの悪鬼に。
そこに足かせが関わってくる。

何と表現したらいのかわからないけど、主人公と一緒に全力疾走して九死に一生を得て故郷に戻ったような安心感と脱力感と少しの罪悪感。
まだまだ自分の中で消化しきっていないのですが、貴志祐介と言う作家の底力見せられた感じです。

妙味のある方は是非一読を…。
今の私のNO.1のお勧めです。
かなりの長文ですけど。


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「数えずの井戸」 京極夏彦 [書庫]

久々にどっぷりと京極ワールドにはまりました。

京極版「番町皿屋敷」
あのお菊さんが井戸から「1枚・・2枚…」と皿を数えるので有名な怪談話。
京極さんにかかるとこんなにも哀しい・・・・・ひたすら哀しい物語になる。

どんなに満たされた状況でも何かが欠落していると感じてしまう青山播磨。
数えることですべてを見失ってしまうから数えることをやめてしまった菊。
数などに意味はない。零も百も同じ。そううそぶいてすべてを破壊しようとする遠山主膳。
手に入らないものを欲しがることはしない。手に入るものならどんなことをしても手に入れようとする大久保吉羅。
数えることしか知らない。そこに意味などない。米搗きの三平。


武家の価値観と町方の価値観。
主筋と家来の価値観。
男と女の価値観。
裁くものと裁かれる者の価値観。

相反する双方の価値観の違いが悲劇を生む。

「数えるから足りなくなる」

何とも意味深なせりふである。
人はいろいろなものを数えようとする。
幸せさえ数に置き換えようとする。
それこそが悲劇を生むのかもしれない。


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「容疑者Xの献身」 [書庫]

ただいま映画が公開されている同タイトルの原作です。

う~ん!!
東野圭吾ワールド健在!!

「白夜行」「幻夜」の悪女と対極をなすひたすら愛する者のために滅びていく男の話。
白夜行の亮司にも通じるかな?

この作品実に奥は深い。
愛する人が犯してしまった事件に自分の頭脳をフル稼働して救おうとする天才数学者。
とっても単純だけど頭のいい彼のトリックや計算が徐々に追い詰められていく緊迫感。
そして東野お得意の大どんでん返し。

単純などんでん返しではない。
犯人が違うとか、誰かが裏切るとかそういうことではなくて、精神的などんでん返し。
あ~言ってしまいたい!!

彼は最後に救われたのか?
彼の慟哭の意味するものは?

そしてそこまでの愛情をただ何の見返りも求められず与えられた彼女は?
どちらがつらいのだろう。

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「幻夜」悪女って…。 [書庫]

たった今東野圭吾著「幻夜」を読み終わった。

そして無性に腹が立っている。
「新海美冬」という女に対してだ。
それはなぜか。

結局彼女のしたこと、しようとしたことその理由や動機に全く納得できないからだ。
白夜行の「唐沢雪穂」と新海美冬が同一人物と思わせるようなくだりがあるが、作者はそれすらはっきりさせていない。
そもそも白夜行と幻夜では悪女の資質が違う。

雪穂の場合は根底に亮司との愛があったからだ。
どんなに亮司を形の上では裏切っているように見えても、心の奥底で雪穂が求めていたのは亮司なのだと思えた。
だが、美冬は違う。
雅也を愛していたとは決して思えない。
そして雅也もまた、美冬に魅せられていながら、亮司とは違う。
どこかでただただ美冬に操られるだけの自分に時折嫌気もさし、ごく普通の幸せを願っている部分もある。


白夜行の雪穂にはここまで腹立たしさを感じなかったのは、雪穂の悲しみや世間に対する怒りなどが少しは理解できたから。
そしてやはり亮司との関係が根底にお互いの魂を包み込んだ愛があったから。


美冬と雅也の関係は、ただただ美冬にとって一番使えるすべての条件を満たした駒であったと言うところに、怒りを感じるのだ。
悪女というのならきっと美冬の方が悪女なのだと思う。
だが、悪女とはそんな風にただ冷徹なだけの女ではいけない。
根底にだれにも溶かすことのできない氷の塊を抱いている女。
そしてその中にはきっと普通の生活をしてきた人間には想像できないようなマグマの様な愛を抱えている女。


雪穂がその後美冬となったと仮定するなら、そこにはやはり亮司を失った雪穂の行き場のない深い悲しみと亮司への愛だと思いたい。
そう考えれば美冬の雅也への仕打ちも少しは許せるかな?
だって雪穂の太陽は失った後も亮司以外にはいないのだから。


白夜行と幻夜はそもそも全く別の話ということになっているはずなのに、作者は絶対に読者の中に美冬=雪穂というイメージを作ろうとしている。
そして最後までそれを謎のままにする。

雪穂=美冬だとしたらやはり私は雪穂の最後を見たい。
それも最後はやはり亮司を思いながらやっと安堵の顔で散っていく雪穂が見たい。
美冬が雪穂ではないなら、彼女には何の興味もない。
ただ一言「地獄に堕ちろ!!」
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「楽園」 宮部みゆき [書庫]

2月に図書館に予約入れていた本が先日ようやく手元に届きました。
予約の際に私の前に8人予約が入っていたので、まあ時間がかかるのは覚悟していましたが何と3ヵ月半。
一人の最大貸出期間は2週間ですからほとんどの方がその間借りてたってこと?

私上下巻のこの本2日間で読み終えましたけど・・・。

「楽園」と言うこの本は宮部作品としては有名なあの「模倣犯」の続編と言うことになっている。
確かに主人公は同じライターさんだし、彼女が今回の事件に手をつけるきっかけになったのも、模倣犯の事件が少なからず影響しているからだけど、話としては全く別物。
ただ、模倣犯の話を知っているといろんな彼女の心情がわかりやすいけど、知らなくても支障はないかな?


今回の話には多少超能力っぽい話が絡んでいる。
前畑滋子は超能力とは言わず異能者と表現しているが・・・。
でも、「龍は眠る」みたいにそこに重きをおいてはいない。
やはり犯罪は人が犯すものだから。

模倣犯の犯人ほど頭はよくないが、とっても似たような思考回路の人間が出てくる。
読んでいると胸糞が悪くなるような手合いだ。
自分の快楽にのみ優先順位があり、その妨げになるものはどんな手を使っても排除し、そのことに何の遠慮会釈もない。
人の命も、未来もすべて自分のためにあると思っている。
模倣犯と違うのは前畑滋子は今回はその人間と直接対決はしない。
やはり模倣犯の事件が彼女を変えたことは紛れもない事実だから。


模倣犯事件の時の前畑滋子と楽園の前畑滋子は別人のようだが、やはり根っこは同じだ。
人はよく心機一転とか、ここから生まれ変わると言うが、根っこはそう変わらないのではないかと思う。
タンポポの根っこからバラが咲かないように、根っこは一生にわたってその人間の自我を支配するのだと思う。


三つ子の魂百まで

この古い言い回しが今とても重く響く。
人の根っこを作るのはやはり愛情と言う栄養しかないのだが、過保護、過干渉、放任。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」
今人間を育てている最中の親としてはただの小説と思えない何か大きなテーマを突き付けられたような気がするのだ。

そしてこの楽園の重要なキーワードである「等少年」。
わずか12歳で事故でこの世を去ってしまった少年と母親のきずなにほっとさせられる。
本来こうあるべきはずの確かな親子のきずな、愛情がこの親子から静かに読み手に伝わる。
わが子を手にかけてしまった夫婦。
子供が持てなかった夫婦。
たった一人の我が子を失った母。
犯罪を犯して何のためらいも後悔もなく快楽をむさぼる子供にどうすることもできない母。


宮部さんは女性だからだろうか、犯罪者になった人間に影響を及ぼしているのは父親よりも母親の方に比重が多いのは。
みんな身を削り、心を削って育ててるはずなのに…。
どこで間違ってしまうんでしょうか。


楽園 上 (1)

楽園 上 (1)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本



楽園 下

楽園 下

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本



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白夜行 [書庫]


白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 文庫



数年前ドラマで見た時から原作読みたいと思っていたのですが、なぜか機会がなくてこんな遅くなってしまいました。
感想からいうと、「悪女」というもののひとつの典型的な形を知ったという感じです。
ず~っと昔、悪魔は美しくなくてはならない。美しくないものに人は魅入られたりしないという言葉を読んでから私の中の悪魔と言うのは恐ろしい姿はしていないのです。

むしろ美しくて、一見儚げでその実ぞっとするような凄みを帯びていること。
これが私の中の悪魔のイメージ。
昔見た映画「インタビューウイズバンパイア」のレスタト(トム・クルーズ)がまさしくイメージどうりです。


この作品はドラマよりもやはり原作の作品感が好きです。
ドラマの雪穂は少女時代は原作のイメージそのままですが、大人になってからは悪女になりきれていないんです。
凄味がない。
だから本当の意味でラストシーンの桐原亮司の死がドラマでは哀しくなかった。
原作の雪穂はもっともっと哀しいほどに悪です。
そしてそんな風にしか生きられない。
そしてそう生きることにためらいがない。


意外だったのは、ドラマでは何回か雪穂と亮司のシーンがあったのですが、原作では一度もないんですよね。
だから二人の口からいろいろな出来事の真相が語られることも一切ない。
本当なら不完全燃焼のはずなのになんだか長距離を走った後のような妙な達成感があります。

「あたしの上に太陽はなかった。でも、暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはなかったけどあたしには十分だった。その光で夜を昼と思って生きてこれた。あたしには最初から太陽なんかなかった。だから失う恐怖もないの」
雪穂の言葉です。
これが白夜行の意味です。
そして雪穂にとって太陽に代わるもの。それが亮司だったんですね。

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「手紙」東野圭吾 [書庫]

手紙

手紙

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本


何気なく図書館で手にした本です。
10数年前「変身」を読んだきり東野氏の著作を読む機会がありませんでした。
今回手に取ったこの作品。もちろん予備知識なし。
文庫と違ってあらすじの紹介などもありませんから全く白紙の状態で手に取りました。

あらすじとしてはたった一人の肉親である兄が自分の大学進学のためのお金を手に入れようとやむなく手を染めてしまった犯罪。
それも空き巣のはずが思いがけない展開で強盗殺人にまで発展してしまい、兄本人はすぐに逮捕され刑に服する。
主人公は突然犯罪者の、それも一人暮らしの老女を狙った強盗殺人という凶悪事件の犯人の身内となってしまった当時高校3年生の弟。
そこから彼の苦悩が始まった。
自分のために兄が犯した犯罪。
しかし自分が望んだわけではない。
一人ぼっちで世間に放り出された彼は何度も兄のことで挫折する。
裏切られる。職を失う。恋人を失う。

救いようのない展開だが一人の人物の言葉に彼は2度助けられる。
1度目はその言葉で彼はすべてを受け入れ(兄の存在も罪も)、家庭を持ちほんのわずか幸せと平穏を手に入れる。
だが、世間は容易に犯罪者の家族を忘れてはくれない。
幼いわが子にまで差別が及ぶにあたり彼はまた苦悩する。
同じ人物の2度目の助言により彼はついに兄と決別する決心をした。
自分の妻と子供を守るためだ。

兄は確かに犯罪者になったが、極悪人ではない。
むしろ弟思いでまじめで善良な一市民だった。
そんな人間が犯罪者になるための垣根は人が思うよりもずっと低いのだ。
そして主人公に助言を与える人物も決して彼にとって優しい言葉はかけない。
むしろ言葉だけ聞けば思わずたじろぐほどむごい言葉だ。
だが、その底にある差別というものに対する考え方はとっても理解できた。

もし自分の身内がある日突然犯罪者になってしまったら
もし自分がある日思いがけず犯罪者になってしまったら
家族は関係ないと言い切れるだろうか。
もし、自分やその家族の身辺に強盗殺人犯の身内が現れたら、それまで普通に付き合っていた人物がその身内だとわかったらどうするだろう。
家族は関係ないと胸を張って言えるだろうか。
犯罪者と犯罪被害者だけがクローズアップされるが、加害者の身内の不幸は深く静かに潜行するものなのだ。
そして犯罪者はその罪をも背負わなければ本当の意味での贖罪にはならないのではないかと思う。


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